1年前はあんなに幸せだったのに・・・離婚という夫婦の危機は突然やってくるものです。また、昔ほど離婚することは珍しくないとはいえ、家庭の赤裸々な状況や悩みを周囲の人に相談することは簡単ではありません。だからといって、誰にも相談せずに勢いで人生の大きな選択をしてしまい、後悔するのは避けたいもの。そういった状況を避けるため、知っておいてほしい基礎知識をまとめました。
離婚の種類には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚、和解離婚、認諾離婚の6種類があります。このうち、日本で一番多いのは協議離婚で、全体の約90%を占めています。その次に多いのが、調停離婚で全体の約8%、裁判離婚は約1%で、それ以外はほとんどないようです。次に、各種類について詳しくみていきましょう。
先にも述べたとおり、協議離婚とは全体の約90%を占める方法です。
協議離婚が多い理由は、裁判所などの機関を通さずに夫婦双方の合意により成立し、費用がかからないという点にあると考えられます。6種類の離婚方法のなかで、裁判所が関与しないのは、協議離婚のみです。また、離婚理由についても問われないため、どのような理由であっても夫婦の合意があればすぐに離婚することができます。
とはいえ、子連れで離婚を考えている方は、子供も含めた家族間での話し合いや、自身が経済的にある程度自立していること、慎重な準備など、しっかりと対応をおこなってから決断することが必要です。なぜなら、離婚後の経済的な不安定さゆえ母子ともに苦しい思いをしてしまったり、「自分のせいで離婚したのでは?」と子供が悩むケースが少なからず発生しているからです。
そのため、親権や養育費、慰謝料、財産分与についての取り決めだけでなく、離婚後に受け取れる手当などの公的制度についても調べておくことが大切です。特に、養育費は離婚後の母子の生活を支える貴重な資金となるため、強制執行力を持たせる公正証書に記載しておくことが望ましいです(公正証書の作成には別途、手続きと手数料が必要)。
また、協議離婚は裁判所などの機関を通さずにできる方法ですが、すべてを1人で解決しようとせずに信頼できる友人や家族、夫婦カウンセラーなどの専門家に相談することは決して無駄ではありません。特に、養育費や慰謝料などのお金に関する法律的な知識が求められる場合には、行政による無料相談や法テラスなどの専門機関を利用すると良いでしょう。
1.離婚の話し合いをする
・話し合いは充分におこなったか
・離婚後の住まい・仕事は決まっているか(目途が立っているか)
・離婚後受けられる公的な支援制度について調べたか
・親権者の取り決めはしたか
・養育費・慰謝料・財産分与の取り決めはしたか(公正証書の作成がおすすめ)
2.離婚の合意が成立する
3.離婚届に必要事項を記載し、署名・押印する
・離婚届用紙は、市町村役場で受け取るか、ホームページからダウンロードしたものを使用する
・提出先は婚姻中の本籍地または夫婦の住所地の市町村役場(本籍地以外を選択した場合は、戸籍謄本が必要)
・証人2人の準備はできたか(成人であれば、家族だけでなく友人や知人でも可)
4.離婚届を市区町村に提出する
・市町村役場によっては、夫婦2人の本人確認が求められることがある(身分証、修正があった場合の印鑑を持ち、可能な限り夫婦2人で提出する)
5.離婚届が受理される
6.離婚が成立する
調停離婚とは、家庭裁判所において夫婦双方が離婚することに合意すれば成立するというものです。原則として、2人の裁判官と2人の家事調停員(弁護士や社会経験や知識が豊富な者から任命)で構成される調停委員会によって進められます。なお、裁判上の離婚をするときは、まず家庭裁判所で調停の申し立てをし、夫婦双方で解決の努力をする必要があります。
申し立てる家庭裁判所は、原則として調停を申し立てる相手方住所を管轄する裁判所に行く必要があります。ただし、相手方の管轄裁判所が遠方で、小さい子供がいて移動が難しいなどの事情がある場合は、申立人の管轄裁判所で調停をおこなうことができます。なお、住所とは住民票上の住所だけでなく、別に住んでいる住所や夫婦双方が合意して決めた家庭裁判所でも申し立てが可能です。
調停離婚は誰もが申し立てられるように、簡単な様式が家庭裁判所に備え付けられています。調停申し立てにかかる費用も1,200円と約800円の郵送代金と安く、利便性が高い方法です。なにより、裁判所において公平な判断のもと進められるので、不当な離婚によって苦しむリスクを軽減できます。このように調停離婚をおこなうメリットがある一方でデメリットも存在します。それは、相手方が調停に出頭しなかったり、夫婦双方の歩み寄りがなく話がまとまらない場合は、不成立になる可能性があるということです。調停離婚はあくまでも夫婦の話し合いの場であり、裁判のように判決が下されることはないということを認識しておきましょう。
1.調停を申し立てる
・原則として調停を申し立てる相手方住所を管轄する家庭裁判所(遠方かつ子供が小さく移動が困難な場合には、申立人の住所管轄家庭裁判所でも可能)
・申立書は、各家庭裁判所で受け取るか(無料)、家庭裁判所のホームページからダウンロードしたものを使用する
・添付資料として申立人と相手の戸籍謄本、申立人の印鑑が必要
・財産分与にかかる申し立てをする場合は、証拠として預金通帳や不動産の登記簿謄本が必要
・DVを理由とする慰謝料の申し立てをする場合は、診断書などもあった方がいい
・収入印紙代1,200円と郵送代金約800円を用意
・慰謝料や養育費などの請求も同時に申し立てる場合は、別途収入印紙代が必要
2.第一回目調停
・期日通知書による通知
・待合室で待機後、申立人→相手方の順に呼び出されて入室(夫婦が顔を合わさずにおこなわれる)
・全体所要時間は約2~3時間
・持参物は、期日通知書、印鑑、身分証明書
3.第二回目以降の調停
・調停が一回で成立することはほとんどなく、結論までに調停開始から6ヶ月程度かかるケースが多い
・第一回目から約1ヶ月後に第二回目が実施されることが多い
・調停の流れは第一回目と同じ
4.調停の終了
・調停の場で取り決められる内容は、離婚解決、未成年者に対する親権者、監護権の決定、財産分与、慰謝料、養育費、面会交流について、その他離婚の際に問題となる金銭面の取り決め等
・離婚成立時は調停調書が作成される
・離婚が成立した後、調停を申し立てた者が成立日から10日以内に夫婦の本籍地または申立人の所在地の市町村役場に離婚届を提出する必要がある
・調停不成立の場合は、裁判離婚の訴えを提起もしくは夫婦間で話し合いをおこなう
協議離婚に応じず、調停離婚の申し立てをおこなっても話がまとまらない場合、それでも離婚の意思が変わらないときは裁判離婚となります。この裁判離婚においては、民法に定められている離婚原因が必要とされています。
(裁判上の離婚)夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
民法第770条第1項
また、上記に定める離婚原因がある場合でも、裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚という判決に至らないことがあります。裁判で勝訴を勝ち取るためには「確かに離婚原因がある」と判断してもらえる客観的な証拠が必要であったり、民事訴訟法や人事訴訟法などの法律に沿った手続きが必要になるため、弁護士へ依頼せざるを得ないということです。また、訴訟期間は1年や2年程度かかることが多いようなので、忍耐力も必要になるでしょう。
1.離婚訴訟を提起する
・協議離婚、調停離婚のいずれも成立しなかった場合(いきなり訴訟を起こすことはできません)
・離婚請求の訴状を作成し、住所を管轄する家庭裁判所に提出する
・親権者の決定や慰謝料、養育費などの請求も同時におこなうことが可能
・訴状作成の段階から法律の専門知識が必要になるため、裁判を有利に進めるためにも早いうちに弁護士へ依頼することをおすすめ
・第一回口頭弁論期日の決定、通知
2.裁判スタート
・約1ヶ月に1回のペースで裁判が開かれる
・双方が主張や証拠(それに対する反対主張や証拠)を提出する(これを何回か繰り返す)
・通常は弁護士が代理人として出廷
・ある程度の争点が詰められており、証拠が出揃った段階で夫婦双方が出廷し、尋問となる
・裁判所は必要と認める限り、いつでも和解勧告を出すことができる
3.判決
・尋問終了後、約1~3ヶ月後に離婚の可否や親権、慰謝料、養育費などについての判決が出される
・離婚の容認が出て、夫婦双方の控訴がなければ2週間後に判決が確定し、離婚成立となる
・離婚が成立した後、訴訟を提起した者が成立日から10日以内に夫婦の本籍地または申立人の所在地の市町村役場に離婚届を提出する必要がある
・判決に不服がある場合は控訴する
審判離婚とは、家庭裁判所が独自の判断で宣言するものです。調停で離婚が合意に至らない場合でも、家庭裁判所が「離婚することが夫婦双方のためで、必要やむを得ない」と判断したときに、双方の意思に反しない限度で、離婚や親権者、慰謝料、養育費などの決定をするものです。実際には、審判離婚がなされることは、ほとんどないようです。また、もし審判離婚がなされた場合でも、審判がなされた日から2週間以内に異議申し立てをすれば、その効力はなくなります。
和解離婚とは、裁判離婚の途中で出される和解勧告が成立するものです。裁判所は必要と認める限り、いつでも和解勧告を出すことができます。勧告に応じるか否かは当事者たちの自由ですが、和解勧告には重要な意味があるので、慎重に検討する必要があります。
認諾離婚とは、離婚訴訟提起後に原告(裁判を起こした人)の要求が被告(裁判を起こされた人)に認められたときに成立するものです。裁判の途中であっても、被告が原告の請求を認めた場合、離婚は成立し裁判は終了します。しかし、認諾離婚には条件があり、親権者を決める必要がなく、養育費や財産分与等の請求も申し立てられていないときに限られます。
以上、6種類の離婚方法についてまとめましたが、いかがでしたか?
離婚というのは、心身ともにとても疲れるもの。長い人だと、何年も協議を重ねて成立するというケースもあります。だからこそ、頼れる人や専門家に相談しながら、あなたとお子さんにとって良い選択肢を見つけていってください。