未婚で二児の母になったシングルマザー。実家暮らしでフルタイム勤務をしています(現在は育休中)
筆者は現在、人材関係の仕事をしています。転職をする際に「小さい子供がいる」「シングルマザーである」などの理由で、時短勤務や在宅勤務を希望する方が少なくありません。しかし、これまで転職市場ではそのような希望を満たす採用枠はほとんどありませんでした。
ところが、この一年ほどで、状況は大きく変わりました。
”時短正社員”に特化した転職サービスが複数立ち上がったり、リモートワークや副業可能であることを積極的にアピールして求人を打ち出す企業が出てきたりしています。
背景には、労働人口が減少し続ける中、企業側が優秀な人材を確保する難易度が上がり続けていることが挙げられます。そこで、一度キャリアを諦めて家庭に入った主婦や、時間的な制約を抱えながらも仕事への意欲のある子育て層などの潜在的な労働力に、企業側が目を向け始めているのです。
現代の外部環境の変化は、シングルマザーにとって「追い風」だと、私は思います。
従来はシングルマザーが働く場合、時間の融通が効くけれど収入が不安定な「パート」か、安定した収入を得られるけれど拘束の多い「正社員」の二択でした。しかし現在は、正社員とパートの良いとこどりをするような就業形態が出てきています。また、副業を組み合わせることで働く場所や働く時間の自由度をあげるなど、様々な選択肢があります。この流れは、エンジニアやデザイナーといった一部の専門職や特殊なスキルを持った人だけの話ではなく、幅広い職種に広がっていくでしょう。
働き方を自在に選ぶことができる環境が整えば、これからの時代に大事なことは、自分の価値観を明確にすることです。与えられた選択肢から消去法で選ぶのではなく、「わたしはどのような働き方がしたいのか」を見定めることは、意外と難しいことかもしれません。以下の3つのステップで考えていきましょう。
明日の暮らしが心配なほどお金が無いと、”食べていくための仕事”選びになってしまいます。時給が10円でも高い仕事、残業代が多く払われる仕事、といった短期的な視点で仕事を見てしまいがちです。これでは、子供と過ごしたい時間を犠牲にしてしまったり、キャリアアップに繋がらない仕事に就いてしまったりということになります。そこで、まずは、自分が今置かれている環境の中で、節約などの工夫をして、当面の生活費を貯めましょう。目安としては、半年分の生活費が手元にあれば良いと思います。1ヶ月の生活費が15万円だとします。90万円あれば、仕事をしなくても半年間はこれまでの生活を送ることができます。この期間で転職活動に本腰を入れることもできますし、次のキャリアに必要な資格を取るための勉強にあてることもできます。必ずしも実際に無職の期間を作る必要はありませんが、この「今の仕事を辞めてもしばらくは大丈夫」という状況を作ることが大事です。
当面の生活費を貯めることができたら、次は少し先のことを考えてみましょう。「自分の価値観を知ることが大事」と言いましたが、子供の成長とともに価値観は変わってもいいと思います。私自身、出産をして180度考えが変わりました。母親になる前は、一生バリバリ働いていたいと思っていました。しかし、子供が小さいうちはなるべく近くにいたい、仕事は人生のほんの一部分だと思うようになりました。子供が小学校や中学校にあがったら、また仕事の比重を上げたいと思うようになるかもしれません。このように、10年先や20年先のことはわからないと思っています。数十年先まで綿密なライフプランを練るのではなく、目先の3年間、一日一日をどんな風に過ごしたいのかといったことを具体的に考えてみましょう。
具体的な「理想の3年間」がイメージできたら、「働き方」に繋げていきましょう。どれくらいの時間を仕事に費やせそうか、自分にとって譲れない条件やこだわらなくてもよい条件は何なのか。おのずと「わたしらしい働き方」が見えてくるでしょう。「わたしらしい働き方」が明確になれば、転職サイトやエージェントに自分の希望をぶつけてみて、転職市場のニーズと照らし合わせて微調整したり、自営業や起業を小さく始めたり、実現可能かどうか探っていくことができるでしょう。
シングルマザーは、自分の人生の舵を自分で切ることができます。実は、時代が求めている「わたしらしい働き方」を、一番実現しやすい立ち位置なのではないでしょうか。時にはひとり親であることを重荷に感じたり、不安になることもあるでしょう。でも、苦しいときには立ち止まったり休息をとれば良いのです。長距離マラソンを走るような感覚で、柔軟な生き方を実践していきましょう。