両親がそろっている家庭と、シングルマザーの家庭…愛に変わりはありませんが、子供に関わる親の数が決定的に違う分、シングルマザーは一人二役をこなさなければなりません。
シングルマザーの育児の課題といえば、「子供と接する時間の短さ」「シングルマザー生活のストレスからくるイライラ」が二大要素です。シングルマザーのみなさんにまず分かってほしいのは、これらの悩みはすべてのシングルマザーが抱えているものだということ。決してあなたは一人ではありません。そして、こうして悩むのは自然なことであり、子供への愛の証なのだということです。もし子供のことを本当にどうでもいいと思っていれば、悩むことすらありませんから。
しかしそこであきらめず、シングルマザー生活の現実である時間と精神的余裕の不足をなんとかして補い、子供に出来る限り幸せと愛情を感じてほしいと願うのも、親ならば当然の気持ちですよね。ではそのために、私たちには何ができるのでしょうか。
子供が何人かいれば、ただでさえ親は取り合いになります。ましてや仕事に追われるシングルマザーともなれば、子供一人一人と一緒にいられる時間は更に短くなってしまいます。そんな限られた時間で子供と強い絆を育むには、このような点に気をつけて接するようにしてみましょう。
シングルマザーは仕事が忙しく、やっと帰宅しても今度は家事に追われる…そんな状況だと、思わず気持ちも暗くなってしまいそうです。しかし繊細な子供は、親が不幸せそうだったり、不機嫌だったりすると、きっと自分のせいだと落ち込んでしまうことがよくあるのです。家事は適当でも、ちょっとさぼったって構いません。それより子供に、にっこり微笑みかけてあげましょう。あなたの笑顔を見ることが、子供にとっては一番の安らぎで、喜びなのです。
もちろん、到底笑顔になれないような、どん底の日もあります。そんなときは簡単に「今日は大変な日でね…」と、出来る範囲で子供に訳を話してあげましょう。子供に心配をかけたくないと思うでしょうが、子供にとっては理由が分からない方がずっと不安なのです。何かあっても、決してそれは子供のせいではないのだと説明してあげましょう。そして、「〇〇がいてくれるから幸せだし、頑張れるんだよ。ありがとう」と伝えてあげると、子供もほっとするでしょう。
子供のため働かざるを得ないシングルマザーは、どんなにもっと一緒にいてあげたくても、子供と離れ離れの時間が長くなります。特に子供が小さいうちは、お互いにとって大変つらいことでしょう。
そんな長い一日が終わり、やっと会えたとき、ママの一日についてぜひ話してあげてください。ずっと一緒にいられなくても、どれだけ子供のことを思っているか、「〇〇のことをいつも思ってるよ」と抱きしめて精いっぱい伝えてあげてください。そして、子供がどんな一日を過ごしたのか、冒険話に耳を傾けてあげてください。離れ離れの時間を共有し、コミュニケーションを通じて愛を深めましょう。
夫婦そろった家庭や専業主婦の家庭の話を聞くと、「それに比べて、私は子供と全然一緒にいてやれてない」と落ち込むこともあるかもしれません。しかし本来、大切なのは量より質。実際シングルマザー家庭は、他の親子より密度の高い時間を過ごしている傾向が強いようです。
あなたが忙しいのは、大事な子供のために精一杯頑張っているから。自分を責めたり、罪悪感を持ったりせず、その分一緒に過ごせる時間に限りない愛を注ぎましょう。
では次に、シングルマザー生活のストレスによるイライラには、どのように対処したらいいのでしょう?今度は、自分自身に対して工夫をすることがカギとなるのです。
欧米には、「いい母親とは、自身が幸せな母親のこと」という言葉があります。これは日本の“尽くす母”のイメージとは大きく異なりますが、実は真理を突いているのです。自分自身が幸せなときほど、精神的に安定して子供に優しくできることってありませんか?子供のため、本当の意味でいい母親でいるには、実は自分で自分を幸せにすることが、一つの近道なのです。
精神の安定のために、まず自分のための時間を持つところからはじめてみましょう。職場の昼休みや子供のお迎え前に、カフェや公園でゆったり過ごしたり、家で子供が遊ぶ横で、趣味の時間を楽しんでみたり。ごくたまに、短い時間でも構いません。いつも頑張っている自分を労ってあげましょう。
仕事や私生活で、ショックなことや嫌なことがある日もあります。そんなときは子供に会う前に、気分を切り替えるアクションを挟むことをおすすめします。
たとえば、仕事のあとに少し散歩をしながら帰ったり、歩きながら家族や友人に電話して話を聞いてもらったり。子供のお迎え前にカフェに寄り、モヤモヤする気持ちをノートに書きだしてみると、自分の感情の整理ができ、冷静になれることもあります。子供の前でイライラしたり、逆に無理をして笑うよりも、本当に笑顔になれるよう自分をケアすることが、子供に健康な姿勢を見せることにもつながるでしょう。
外国人の友人たちと話すと、“日本の母”のスタンダードの厳しさにいつも驚かれます。自分を犠牲にして子供のために生きることが当然だとみなされ、その基準から少しでも外れるようなことがあれば非難される…確かに、母親になったことで子供のためにあきらめることはたくさんあります。しかし私たち母親は、果たして本当にすべての物事をあきらめる必要があるのでしょうか?
たとえば、シングルマザーが恋愛をすると、「子供のことをかえりみない」と非難する人がいます。しかし、その恋愛の先に、幸せな再婚や家族があったとしたらどうでしょう。批判に屈して、幸せをあきらめる必要はないのです。悩んだときは、「これをあきらめることは、本当に先々まで子供のためになるのか」「これをあきらめないと、子供は不幸になるのか」を、時間をかけてしっかり考えてみてください。
最後に、もっとも大切な「子供に愛が伝わるコミュニケーション方法」についてお話しします。子供の年齢によってバリエーションをもたせて実践してみてください。
スキンシップがもつパワーは偉大です。お互いの情緒を安定させ、愛情を育みます。欧米では、女性が精神的健康を保つためには、一日に30回、ポジティブなスキンシップを持つ必要があると薦められているほどです。
子供の送り迎えや帰宅時に、「おかえり!」と笑顔でぎゅっと抱きしめるところからはじめてみてはいかがでしょうか。小学校低学年くらいまでは、抵抗なくこの習慣をスタートさせることができるでしょう。小学校高学年になってくると恥ずかしがる可能性もありますが、人目のないところなら案外応じてくれるものです。帰宅時が難しければ、寝る前や朝送り出すときでもいいですね。小さい頃から始めると、欧米の子供のように大きくなってからもハグを「うちの習慣」として受け入れてくれる可能性がより高くなります。
中学生、高校生以上になり、子供が抱きしめることに抵抗を示すようになったら、ポンと肩を優しくたたいたり、または単にとびきりの笑顔でほほ笑みかけてあげるだけでもいいでしょう。
大切なのは、帰ってきた瞬間をポジティブなアクションからはじめるということです。子供はあなたに会えて嬉しいと思っています。(もし顔には出さなかったとしても、です。)そこでまずぎゅっと抱きしめてあげることで、子供は母のあたたかい愛を感じて安心できるのです。最初は恥ずかしいと思うかもしれませんが、試しにぜひ挑戦してみてください。
また、子供が話しかけてきたら必ず手を止め、顔を見て話しを聞いてあげると、子供は愛されていると実感することができます。なによりも子供のことが大切で、優先するというメッセージを伝えることができるからです。
手が離せないときや、ながら聞きになるときはその旨ちゃんと断り、ときどき目を見てリアクションしてあげましょう。親がこの原則を守るようにすると、子供も同じように、こちらが話すときにちゃんと聞いてくれるようになります。
話しかけてくる、今日あった出来事や、自分の思いを伝えようとしてくることは、子供から親への愛着のあらわれです。「今は忙しいのに…」と思うときもあるかもしれませんが、子供から親への愛情表現の一つだと理解し、出来る限り受け入れてあげたいものですね。
そして、日常生活の中で、親子だけの“小さな儀式”を作って実践してあげることも、とても効果的です。たとえば子供が小さい場合は、寝る前に絵本を読んであげる、一緒にお風呂に入るなど、ささいなことで構いません。小学生であれば、交換日記や手紙のやり取り、中高生ならお弁当に一言メッセージを書いて添える、などもいいかもしれません。他にも、一緒にドラマやDVDを観たり、ちょっとした散歩なども喜びます。毎日が難しければ、週末だけ、月に一度でも構わないのです。大切なのは、習慣化して、できるかぎり継続してあげることです。
こうした小さな儀式や習慣は、子供の日々の支えになります。親からいつも愛されているという実感を与え、自己肯定感を高めることにつながるのです。親からすれば「そんなことで?」と思うかもしれませんが、子供はこうした小さなことをいつまでもよく覚えていてくれます。親子の特別な絆を感じてもらうためにも、出来ることからはじめてみてはいかがでしょうか。
シングルマザーは一人で仕事や家事をこなさなければならないため、子供や自分のことが後回しになり、罪悪感をもつことが多々あります。一緒にいる時間が短い、ついイライラして優しく出来ないなど、課題も尽きないでしょう。しかし、あなたがどれほど子供のことを大切に思い、子供を守るために日々頑張っているのか、伝える方法はたくさんあるのです。一緒にいられる時間を充実させ、精いっぱい愛を表現しましょう。子供と密な時間を過ごすこと、それがシングルマザーの子育てのポイントです。