子供が1歳のとき離婚し、3歳のとき現在の夫と再婚。アメリカ人の夫とは育児の常識が違うので、カルチャーショックを受けることも多い。現在はカウンセラーとして女性の悩み相談・メンタルケアに対応。URL:https://megumiriyo.themedia.jp/
私は27歳のとき、当時1歳だった子供を連れて離婚し、シングルマザーになりました。前夫とは妊娠をきっかけに入籍したのですが、家庭内暴力や女性問題、金銭問題が絶えず、短い結婚生活は殺伐としたものでした。それでも前夫はなかなか離婚に同意してくれず、長くストレスフルな話し合いを経て、ようやく離婚がまとまったのです。
離婚したとき、私はどん底まで落ち込んでいました。前夫との破滅的な結婚生活によって、私はすっかり男性不信におちいり、しかし同時に孤独に苦しんでいたのです。幸せそうな家族連れを街で見かけるたびにうらやましく感じ、自分の子供には父親がいないということが不憫で申し訳なくてたまりません。実家を頼ることはできない状況だったので、1人でちゃんと子供を育てていけるのか、不安でいっぱいでした。そして、職場には他にシングルマザーがいなかったので、批判や陰口の中で非常に肩身の狭い思いをしていました。
私自身もシングルマザー家庭で育ったため、小さい頃から、両親揃ったあたたかな家庭に対する強い憧れがありました。深い愛情と信頼感でつながった人生のパートナーがほしいという気持ちもあり、できれば再婚したいと思っていましたが、状況的に難しいだろうと、半ばあきらめてもいました。
このように、非常に後ろ向きな気持ちと状況からスタートしたシングルマザー生活でしたが、シングルマザーとしてのモテ期は、離婚直後からスタートしました。人づてに私の離婚を耳にした昔からの友人男性たちや、以前の交際相手たちが、次々と連絡してくるようになったのです。「最近どうしてる?」といったご機嫌伺いからはじまり、離婚したことを告げると「何でも相談にのるから」「子供がいて大変だろうし、何か力になりたい」と言ってくれるのでした。もしくはもっとダイレクトに、「前からずっと好きだった。離婚したなら、今度は自分にチャンスをくれないか」と言ってくる人も何人もいました。あれよあれよという間に、シングルマザー時代にプロポーズされた人数は12人にのぼり、「子供を抱えて離婚した私の恋愛人生は終わった」と思い込んでいた私は、心底驚き、同時に人生に希望を持つことができたのでした。
私がシングルマザーになってすぐ、大きな災害が起こりました。まだ1歳の子供を連れての避難所生活は困難を極め、私は地震で崩れかけた自宅を前に放心状態でした。そんな時、仕事で他県に住んでいた友人男性が、何時間もかけて車で駆けつけてきてくれたのです。道も塞がっていて、通行止めばかりの悪路を、車いっぱいに食料やおむつを積んで届けてくれ、本当に感動しました。私さえよければ、子供共々身を寄せないかとも言ってくれました。「言えなかったけど、ずっとあなたのことが好きだった。俺でよければ、いくらでも頼ってくれて構わない。」と告げられ、彼とは親友だと思っていたこともあり、驚きましたが純粋に嬉しく感じました。
私は、元交際相手とは友だち付き合いを続けるタイプというわけではありませんでしたが、定期的に連絡や近況報告をくれる人はいました。20歳から2年間交際していた彼もその一人で、時折私の近況を聞いてくるのでした。離婚後に連絡があったとき、シングルマザーになったことを話すと、彼から「自分が子供の父親になりたい」と突然の申し出がありました。「きみのことはずっと前から知っている。きみと別れてから、それ以上に愛せる人に出会えない。別れたことを本当に後悔してきた。そんなきみの子供なら、心からかわいがって愛せる。自分と結婚して、あたたかい家庭を作ろう。」と言われ、思わず心がゆらぎました。彼は外国に住んでいたので、子供を連れて引っ越すのは私にとってハードルが高く、結局お断りしましたが、もし彼が近くにいたならどうなっていただろうかと思うことがあります。
職場と家、保育園の往復で、一息つく間もなかなかありませんでしたが、それでも新しい出会いもいくつもありました。その中の一人が、現在の夫となった男性です。彼とは、別の職場との共同プロジェクトを通じて、ペアを組んで仕事をすることになったことがきっかけで知り合いました。私と彼は人間として一見真逆の点が多く、「あまり合わないタイプかも…」と悩んだこともありましたが、打ち解けてみると不思議と相性がよく、徐々に友人同士になっていきました。仕事相手だったこともあり、彼が私よりずっと年下だったこと、私に子供がいることなどが原因で、最初はまったく恋愛モードではなかったのですが、私が病気で体調を崩したことを機に、彼が子育てのヘルプを申し出てくれたことが原因で、関係が深まっていきました。再婚後、なぜ私を好きになってくれたのか聞いてみたところ、「子供に対する愛情深いしぐさや、優しい言葉、辛抱強い態度にグッときた。」と教えてくれ、「むしろ子供がいなかったら、こんなに深く尊敬して愛するようになったか分からないかも。」と笑っていました。
シングルマザーの毎日は、家事・育児・仕事のくり返しで、息つく暇もありません。そんな中で恋愛を楽しんでいくためには、生活とのバランスをうまくとっていくことが大切なのだと学びました。
私は職場で、「自分がシングルマザーであることで、周りに迷惑をかけている」と、非常に肩身の狭い思いをしていました。保育園に子供を預けて働いていても、子供が病気をして急に休まなければならなくなったり、子供のお迎えがあれば無制限に残業をすることもできません。「シングルマザーなんだから、恋愛にかまけてないで、仕事と子供に人生を捧げろ」と言ってくる人もいて、私自身も「自分には恋愛をする資格などない」と思っていました。しかしあるとき、そうやって卑屈になってあきらめたところで、自分や子供が幸せになるわけではない、「私はやっぱり再婚したいから、恋愛だって大切なんだ」と思うようになったのです。
シングルマザーとして生きることを決めてから、私は自分の人生の優先順位についてもよく考えるようになりました。私にとって一番大切なのは、子供。仕事は子供と生きていくための手段であって、必要だけど人生の全てではない。私は人生のパートナーがほしいけれども、その人が私の子供を受け入れてくれなかったり、子供と相性が悪ければ、私は子供の方を取る。でも出来れば、子供との暮らしと自分の人生を両立させたい、と思いました。そこで交際相手にも、私は遊びの恋愛に時間を割くつもりはないこと、そして子供と彼、どちらも犠牲にせずに付き合っていく道を探したいことを伝えるようにしていきました。
結果として私と現在の夫が見出したのは、「一緒に子育てをしながら2人の絆を深めていく」というスタイルでした。保育園へ一緒に子供を迎えに行き、家でみんなで過ごしたり、週末も積極的に子供を連れて出かけました。私の人生と子供が切っても切れない関係にある以上、無理をして分けようとするより、私のあるがままの暮らしを一緒に分かち合うことにしたのです。
2年半のシングルマザー経験から、「シングルマザーはもっと自信を持っていい」ということ、そして「恋愛だって大切な人生の一部なんだ」と感じました。モテるか否かは子供の有無だけで左右されるものではありません。また、将来巣立っていく子供に罪悪感を抱かせないためにも、母親が自立し、精いっぱい人生を楽しむ姿を見せることは、とても大切なことではないでしょうか。これからシングルマザーになる人や、今シングルマザーとして頑張っている人は、ぜひバランスを保ちながら、恋愛も謳歌していってほしいと思います。