離婚をする際、決めなくてはいけないことはたくさんあります。まず子供がいないとしても、財産分与、夫婦間での保証人の問題、慰謝料について話し合いが持たれ、子供がいる場合は、親権、養育費、面会交流など子供の将来に関わる重要なことを決めなければいけません。
しかし、離婚の際に一生懸命話し合い取り決めを行っても、この約束が守られないことがあるのが現状です。残念なことに約束が守られなかった時、泣き寝入りすることが多いのは子供を一生懸命育てている母親とそしてその権利を持つ子供です。
そうならないためにも、「口約束」「離婚協議書」「調停調書」「公正証書」の違いをしっかりおさえておきましょう。
お互いの話し合いで離婚が成立する協議離婚は「口約束」で取り決めることが多く、条件が揃えば離婚届を提出することで離婚成立となります。
何か証拠を残すというよりは、お互いの認識の中で約束が取り交わされるという形になります。 しかし、この口約束にはメリットとデメリットが存在します。
お互いに話し合いがまとまれば、あとは離婚届を記入し提出するだけで簡単に離婚は成立します。
離婚の際は、「離婚したい」という気持ちが強く、早期の解決を望む方も多いでしょう。この口約束がいちばん時間的にも精神的にも負担は少ないといえます。
取り決めのなかには、金銭的なことが多く含まれます。特に子連れであれば養育費が一番大きな問題ではないでしょうか。
しかし、この口約束では養育費の金額や支払期間などの約束事項が形として残っていないため、万が一支払いが滞った場合、証拠がないのと同じです。
離婚協議書は口約束を文書化したものです。
「離婚協議書」は口約束と同じようにお互いの話し合いで離婚を成立させる協議離婚の時に作ります。夫婦間で作成することが可能で、特に書式なども決まっていません。
口約束との大きな違いは「契約書」であることです。
もし万が一、支払いが滞ったとしても、口約束の内容の証拠となります。書面として残っていることで訴訟などの場合は証拠として扱われることがあります。
また、離婚協議書を作成するのに費用は発生しません。当事者が作成するため、時間が必要以上にかかったり、金銭的な負担もなく「契約書」が作成できます。
よく離婚協議書は紙切れと同じと言われることがありますが、その理由がこのデメリットに関連しています。離婚に際しての「契約書」ではありますが、法的効力がありません。
そのため、養育費などの支払いを要求する際は、別途、訴訟を起こさなければいけない場合があります。
「調停調書」は離婚をする当事者が作成する「離婚協議書」とは異なります。
調停調書は、「調停離婚」で離婚が成立した場合のみ、家庭裁判所で作成される公文書です。言い換えると「調停調書」を作成する場合は、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てる必要があります。
調停調書は家庭裁判所で作成される公文書のため、法的効力を有しています。例えば、養育費など金額が明確なものが不払いになった場合、相手の給料を差し押さえるなどの「強制執行」が可能となります。
そのほか「履行命令」と「履行勧告」ができるという大きなメリットがあります。 滞納があった場合、元妻から支払いを要求されても相手はあまり動じることはないかもしれません。そうした時に、この調停調書があれば家庭裁判所が元夫に対して「払いなさい」と履行勧告を行うことができます。 履行命令は、家庭裁判所に申し立てを行うことで「約束を守りましょう」と裁判所が相手に対して命令をすることです。
調停離婚にかかる費用は数千円です(弁護士に依頼する場合は別途必要)。調停調書の作成費用も数千円なので経済的負担も少なくすみます。 子持ち離婚をするシングルマザーにとっては万が一の時の強い味方になってくれます。
メリットの多い調停調書ですが、先にも述べたように離婚調停を家庭裁判所に申し立てなければ作成はできません。また、離婚調停は申し立ててもお互いに離婚の同意が得られなければ不成立になります。つまり、離婚に相手が同意しない、または離婚の条件に折り合いがつかず、長引きそうな場合は不成立になることもあり、調停調書も作成できません。
離婚調停に要する期間ですが、申し立てをしてから1回目の調停までに約1カ月~2カ月かかり、さらに約1カ月に1回のペースで調停があります。協議離婚と比べると解決までに時間がかかるということを知っておきましょう。
離婚の約束を公文書として残す方法は、「調停調書」だけではありません。
協議離婚であっても、公文書として約束を証拠として残すことができます。日本では協議離婚で離婚が成立することが多いため、この公正証書について知っておくことが大切です。
公正証書は「離婚協議書」を公文書にしたものです。
公正証書は公証役場に作成を依頼し、公証人が離婚協議書を基に作成するため法的効力を有します。
協議離婚で離婚の成立を目指し、さらに公文書として約束を残したい場合に作成します。
公文書であるため、養育費などの支払いが滞った場合に訴訟を起こす必要がなく「強制執行」ができます。 また、証拠として残る公文書の存在は、とても心強いものとなり精神的な支えとなることもあります。
公正証書を作成するには費用がかかります。 その費用は公正証書で取り決める金額の総合計で段階的に決められています。 例えば養育費であれば、「1カ月の養育費×12カ月×10年」の金額が対象となり、それ以外に慰謝料、不動産などを加えた金額を合わせて計算されます。養育費は実際には20年もらうとしても、最長10年分の金額が対象となります。 作成費用に関しては、養育費に関する契約だけであれば2~3万円程度になることが多いようですが、契約内容が複数にわたると5万円以上かかることもあります。
離婚の話し合いをしている時は、「早く離婚をしたい」という感情が優先されることが多いかもしれませんが、子持ち離婚の場合は自分だけの問題ではありません。子供の将来を考えると養育費などの約束はキチンと守ってもらうことが大切です。
養育費は子供の権利でもあります。協議離婚の際は「公正証書」を作成しておくことで、万が一の時に子供を守ってくれます。
離婚は焦らず、母子の将来を見据えて、どのような形で成立させるのか考えましょう。