子供が1歳のとき離婚し、3歳のとき現在の夫と再婚。アメリカ人の夫とは育児の常識が違うので、カルチャーショックを受けることも多い。現在はカウンセラーとして女性の悩み相談・メンタルケアに対応。URL:https://megumiriyo.themedia.jp/
私と前夫は、約2年間の結婚生活の末、離婚しました。前夫との離婚には大きく5つの理由がありました。のちに、他のシングルマザーたちと知り合い、離婚について話し合ったことにより、この5つの離婚原因は複雑に絡み合っており、大多数のシングルマザーが同じような問題を経験していたと分かりました。
私が離婚を決意した最大の理由は、前夫による、私と子供への家庭内暴力でした。前夫の暴力は私の妊娠中にはじまり、出産後さらに悪化しました。私が妊娠・出産を機に子供に関心が向いたことで、子供に私を“とられた”と不満がたまったのだと言っていました。
言葉の暴力でののしられることは、日常茶飯事でした。少しでも機嫌を損ねると怒鳴られ、前夫は物を投げたり、家具や壁にあたったりしました。私を叩いたり、掴んだりといった直接的な身体的暴力はさほど多くなかったもののゼロではなく、「これはお前を殴らないように、代わりにこうしてるんだ」と暴れて物を壊す姿を見せつけられるのは、恐ろしい経験でした。
離婚を決定的にしたのは、前夫が生まれた子供にも暴力を振るったことでした。ある晩酒に酔った夫は、新生児だった子供が寝ていたベビーベッドを蹴って暴れたのです。このまま一緒にいては殺されるかもしれない…子供を抱いて、私は着の身着のまま逃げ出しました。その後は、私の目の前では表立って子供に暴力は振るわなくなりましたが、私が少しでも離れると、子供を怒鳴ったり叩いたりしていたようです。前夫がいる場では、私と子供に安全はありませんでした。
それに加えて、前夫には女性関係の問題が絶えませんでした。交際中から、前夫の浮気癖に悩まされてきましたが、別れを切り出すと彼はいつも泣いて謝り、もう一度チャンスがほしいと懇願しました。そして私が納得しないと、今度は暴力に訴えるのです。しかし何度「他に女性がいるなら、出て行ってほしい」と伝えても別居や離婚には同意してくれませんでした。
これ以上耐えきれないと感じたのは、前夫が彼の親友の彼女と数年にわたって浮気を繰り返していたことが発覚したときでした。このことに私は非常に深く傷つき、それから長い間、男性を信じることが出来なくなりました。いまだに、すべての男性は浮気をするものなのではないか、不誠実な生き物なのではないかと、疑ってしまう気持ちが残っています。
そして前夫は、非常にギャンブルや夜遊びが好きでした。出産時、私の陣痛がはじまっても、前夫は深夜まで飲み歩いていて、結局朝まで帰って来なかったほどです。その日に限らず彼は連日夜遊びに明け暮れ、泥酔し、寝込んでしまった彼を引き取りに来てほしいと、電話を受けたことは一度や二度ではありません。
麻雀が好きで、一度はじめるとやめることができず、一晩連絡がつかなくなることが頻繁にありました。クラブ遊びやバーで飲み歩くことも大好きで、それは女性関係の問題にもつながっていました。
子供が生まれてからも、前夫の遊び癖は治らず、家にいない夜がほとんどでした。朝方になると帰って来て、目が覚めた子供が騒ぐと、「うるさい!黙らせろ!」と怒鳴られ、私たち母子は家を出されました。仲間内では遊び好きで好かれていた前夫でしたが、こうした生活で、私との心の距離はどんどん離れていきました。
前夫と私は交際期間約2年で結婚しましたが、その間で私が彼に費やしたお金は200万円以上にのぼりました。知り合った当時、私は社会人、前夫は学生で、私が彼の生活の一切の面倒を見ていたからです。彼は、親からの仕送りがろくにもらえず、苦学生として頑張っているのだと言っていました。私自身、自分で働きながら大学を出た身として彼の境遇に共感し、出来る限り彼を経済的に助けてあげたいと思ったのです。
彼は私と知り合ったあと、「勉強が忙しくなった」と言い、アルバイトを辞めてしまいました。彼の口癖は、「今はお金がないけど、就職してお金が出来たら返すから」というものでしたが、もちろんそれが果たされることはありませんでした。
そんなときに、私の妊娠が発覚したのです。彼は「子供のため」と、別れを拒否しました。しかし相変わらず仕事にはついてくれず、私は自分一人で家計を支え続けなければならない不安に押しつぶされそうでした。
前夫との別れは避けられないだろうと分かっていても、最後の望みに賭けたかった理由、それは子供のことがあったからでした。私もシングルマザー家庭で育っていたため、子供には夫婦そろった家庭を作ってあげたいという思い、そして前夫の「子供が出来れば俺も変わる」という言葉を信じたい気持ちがありました。前夫にどんなに悪いところがあったとしても、もし子供のいい父親になってくれていたとしたら、私はまだ離婚せずに一緒にいたかもしれません。
しかし実際はというと、前夫はそもそも子供に関わることを一切拒否しました。生まれた子供は泣くばかりで「思っていたのと違う」と、前夫は子供と過ごすことはほとんどありませんでした。前夫が就職するとそれはさらに悪化し、子供と顔を合わせることは皆無になりました。私たちはカップルとしても、家族としても破綻し、もはや修復は不可能でした。
そうしてはじまった離婚の話し合いでしたが、前夫は離婚になかなか同意してくれませんでした。とくにこれら3つのことに関しては、話し合いが難航しました。
私が前夫に費やした金額に関して、私は結婚時に「もし離婚する場合は必ず返してほしい」と条件をつけていました。前夫はそれに同意していましたが、もちろん実際離婚の話し合いがはじまると、返済する義務はないと言い張ったのです。最終的には、彼が実家からお金を借り、半額の100万円を私に代わって返済することで同意が得られましたが、それでも私には借金だけが残りました。
子供に対して、結婚中はまったく関心を持たなかった前夫でしたが、離婚するとなると自分が引き取ると言い出したのには驚きでした。もっとも、実際は子供を引き取って養育したいと言ったのは彼の実家の両親で、「初孫、家の跡継ぎを渡すわけにはいかないから」という理由でしたが。しかし、私が前夫から私たち母子への家庭内暴力について公共機関に相談に行ったことがあったため、それが証拠の一つとして夫側が子供の親権に対して不利になり、最終的に親権は私に渡り、無事に子供を引き取ることができました。
また、どちらが家を出ていくか、という点でもなかなか決着がつきませんでした。当時私たちは賃貸マンションに住んでいました。彼はその部屋に特別な思い入れがあったわけではないようでしたが、「なぜ自分が家を出て行かなければならないのか」というプライドと「引っ越しが面倒、お金もかかるのが嫌」という点で、自分が出ていくことにはなかなか同意しませんでした。結果として彼の転勤が決まったため、前夫は家を出ていきましたが、そうでなければもっとこじれていたことでしょう。
ではここで、離婚を成立させるためにどんな点に気をつければいいのか、離婚理由別に詳しく見てみましょう。
(1)できれば別居し、子供と自分の身の安全を守る
(2)細かく記録をつけ、証拠を残す
(3)公的機関に相談しておく
(4)さまざまな行政支援を活用する
(5)子供と自分のメンタルの健康に気を付ける
できれば最初に別居する方が、離婚がまとまりやすくなります。同じ家に住んでいると、離婚の話し合いをする中で、暴力が悪化する可能性があるからです。まず別居して、自分と子供の身の安全を守りましょう。経済的な理由で別居が難しい場合は、役所に相談すると、母子一緒にかくまってもらえるシェルターなどの支援を紹介してもらえます。
離婚の話し合いは、必ず外の人目のある場所で行いましょう。誰か信頼できる人に立ち合いを頼むのもいいでしょう。話し合いを録音しておけば、それも証拠になります。
そして、こうした家庭内暴力の被害者は、母子共に精神的に非常に大きなショックを受けています。子供と自分のメンタルの健康回復のため、行政支援などを活用していきましょう。
離婚の話し合いの前に、出来るだけ証拠を集めましょう。夫を責めたくなる気持ちをぐっと抑え、夫を味方につけて、相手の女性の情報や詳しい経緯を、出来る限り聞き出すのです。相手の女性から慰謝料を取ることができるケースも多いので、夫を切るのはそれからでも遅くはありません。
「ギャンブルやお酒をやめられない」というのは、立派な依存症、精神的な病気です。客観的な証拠を残すために、記録をつけるようにしましょう。どれくらいの頻度で依存行為を行っているのか、それを止めようとするとどういう反応が出るのかなど、状況をなるべく細かくつづり、公的機関に相談に行きましょう。
お金の問題は、額が大きくなる場合、弁護士に相談するのが一番の近道です。弁護士会の無料相談などが行われていますので、いきなり弁護士事務所はハードルが高いという場合は、そういった行政関係の相談サービスを活用しましょう。
また、夫が生活費をくれず、生活していけないなど、対応が急を要する場合は、役所の福祉相談窓口へすぐに相談しに行きましょう。
子供に関することが原因の場合、地区の担当保健師さんや、子供支援の部署に相談しておきましょう。身体的・精神的虐待などが見られた場合、細かく記録をつけて相談しておくことで、万が一裁判になった際の証拠とすることができます。公的機関への相談記録は重要な証拠です。母子支援などを受ける際にも役立つことがありますので、まずは福祉担当窓口および子供支援担当部署への相談からはじめてみてください。
シングルマザーになるには、それぞれさまざまな原因がありますが、全員に共通して言えるのは、何らかの問題に苦しみ、一生懸命乗り越えようとしたということでしょう。誰だって、子供を抱えて離婚する苦労は分かっています。それでも私たちシングルマザーは、子供と自分の身の安全や幸せのため、離婚せざるを得なかったのです。それは失敗の歴史ではなく、幸せになることをあきらめなかった証拠だと、私は思います。
今、離婚を検討している人は、離婚するべきなのかどうか、どうやって離婚すればいいのか悩んでいるかもしれません。独りぼっちで不安に感じているかもしれませんが、本当はあなたの仲間がたくさんいます。みなさんが離婚により、母子共に幸せになれるよう、心からお祈りしています。