シングルマザーという道を選択したとき、最も気になるのは離婚後の生活だと思います。特に経済的な負担はできるだけ軽くしておきたいもの。これからシングルマザーになるという方も、自分が受けられる制度や手当はどんなものがあるのか、家計の参考にチェックしてみてください。
シングルマザーが利用できる手当や助成金はいくつか用意されていますが、各自治体によって内容にバラつきがあったり、複雑化しているのが現状。なかには役所窓口に行っても、適切な案内を受けられず、利用できる制度を知らずに過ごしている方もいらっしゃいます。ここではシングルマザーが利用できる10の手当と助成金の概要をまとめました。
すべての子育て世帯を対象とした国から支給される手当です。
0~15歳の国内に住所がある児童(15歳とは中学校卒業の年度末までを意味する)
0~3歳未満:一律月額1万5000円
3歳~12歳(小学校卒業まで):第1子・2子 月額1万円、第3子以降 月額1万5000円
中学生:一律月額1万円
年間所得が約960万円を超える世帯の児童に対しては、支給金額が月額5000円とされています。
年3回。毎年6月、10月、2月に振り込まれます。
支給条件を満たしているかどうかは、毎年6月1日に判定。そのため、毎年居住地の市区町村役所に現況届を提出しなければいけません。詳細は毎年6月に役所から郵送されてくるので、月末までの手続きを忘れずおこないましょう。
離婚を機に氏名が変更した場合や転居した場合にも届け出が必要となります。
転居先が元の居住地の市区町村外であった場合は、転出した日の次の日から数えて15日以内に必ず転入先で申請をしましょう。万が一、15日以内に申請ができなかった場合は、残念ながら遅れた月分の児童手当の支給はおこなわれないので注意が必要です。
離婚によって自分の名義の口座に振込先を変更する場合は、まず元夫に役所に行ってもらい、振り込みを辞退する手続き「児童手当・特例給付受給事由消滅届」を提出してもらいましょう(印鑑持参)。なかなか元夫が手続きをしてくれず、手当がもらえない・・・というケースも多発しています。
これから離婚届を提出する方は、元夫と一緒に役所へ行き、離婚届と辞退手続きを一緒に済ませるのが効率的です(自分の印鑑と通帳持参)。
実際は夫が手続きに応じてくれないケースは大いにあります。
夫と離婚調停中で住民票上、別居している場合、同居優先の申し立てをすれば、受給者を妻に変更することができます。
その場合、妻の住所地で「児童手当等の受給資格に係る申立書」と下記の1から4のいずれかを添付して申請します。
1 協議離婚申し入れに係る内容証明郵便の謄本
2 調停期日呼出状の写し
3 家庭裁判所における事件係属証明書
4 調停不成立証明書
母子家庭および父子家庭を対象にした国から支給される手当です。離別でも未婚でも、母子家庭になった理由は問われません。
母子家庭および父子家庭の0~18歳に到達して最初の3月31日までの間の年齢の児童
扶養人数や所得によって、支給額が異なります。支給区分は、「全部支給」「一部支給」「不支給」の3区分に分かれています。また、2017年から物価スライド制が導入されたため、支給額は物価によって毎年変動します。
所得制限は扶養する子供の数によって細かく分けられています。ちなみに、所得とは年収ではなく、年収から必要経費を引いた額のことです。児童扶養手当の場合、所得の計算式は次の通りです。
所得 = 年収 - 給与所得控除額 - 8万円(-諸控除)+ 養育費の8割
※諸控除には障害者控除、特別障害者控除、医療費控除などが含まれます。
児童扶養手当の年度は毎年8月から始まります。例えば、平成31年度の支給というのは、平成31年8月~翌年7月までのことです。また、平成31年度の支給額は平成30年1月~12月の所得で決まります。
一部支給の支給額を計算する場合、少し複雑になりますが、以下のような計算で求められます。
手当月額=42,900円-{(受給者の所得額-所得制限限度額)×0.0229231}
※{}内は10円未満四捨五入
(例)親1人子供1人、就労収入181万円(年額)、養育費30万円(年額)のAさんの場合
4万2900円 -{(125万円※ - 87万円)× 0.0229231}= 3万34190円(Aさんの支給額)
※125万円 = 109万円(就労収入181万円の給与所得控除後)- 8万円(社会保険料相当)+ 24万円(養育費の8割)
現在の支給時期は年3回(8月、12月、4月)で、1回につき4ヶ月分の手当がまとめて支給されています。
2019年11月からは、年6回(1月、3月、5月、7月、9月、11月)に、2ヶ月分の手当が支給される予定となっています。
児童扶養手当の支給額は同居人の収入も審査対象となります。そのため、親や兄弟、同居の彼氏がいる場合は、その所得額によっては支給停止になる可能性があります。
児童扶養手当の審査は厳しく、はじめに申請すれば終わりというわけではありません。毎年8月に現状を伝える届けを役所に提出しなければいけません。この届けは手当を受給している方だけでなく、停止の方も出す必要があります。
母子家庭および父子家庭を対象に、世帯の保護者や子供が病院や診療所で診察を受けた際の健康保険自己負担分を居住する市区町村が助成する制度です。助成内容は市区町村によって異なります。
支給条件は市区町村によって異なりますが、主に以下のようなものです。
・ 健康保険に加入している母子家庭の母または父子家庭の父と18歳未満(18歳に到達して最初の3月31日まで)の児童や父母のいない18歳未満の児童
・父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
所得制限は市区町村によって異なります。
子育て世帯の経済的な負担を軽減するため、保護者が支払う医療費の一部を市区町村が支給する制度です。ひとり親家庭の医療費助成制度が、所得制限により該当しない場合でも、児童の医療費助成は受けられる可能性があります(親に対する医療費助成ではありません)。
小学校就学前、中学校卒業までなど市区町村によって対象者が異なります。
通院や入院による保険診療で支払った医療費の自己負担分の一部が助成されます。詳しい助成金額は市区町村によって異なります。
所得制限は市区町村によって異なります。
特別児童扶養手当とは、国が支給をおこなっている制度です。障害のある20歳未満の児童を養育している方を対象に、条件を満たしていればすべての世帯に支給されます(所得制限あり)。
政令に規定する障害の状態にある20歳未満の児童を監護している父母(主として児童の生計を維持するいずれか一人)、または父母にかわって児童を養育している者。ただし、次のいずれかに該当する場合は対象外となります。
・児童または手当の支給を受けようとする者が日本国内に住んでいないとき
・児童が施設に入所しているとき
・児童が障害を支給事由とする公的年金を受け取ることができるとき
支給額については、物価スライド制が適用されています。以下は児童1人あたりの金額です(平成30年4月分から変更となっています)。
1級 月額5万1700円
2級 月額3万4430円
受給者もしくはその配偶者または扶養義務者の前年の所得が一定額以上であるときは支給されません。
障害児福祉手当とは、国が支給を行っている制度です。重度障害児に対して、その障害のため必要となる精神的、物質的な特別の負担の軽減の一助として手当が支給されます。
精神または身体に重度の障害があるため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある20歳未満の者
一律月額1万4650円です(平成30年4月分から変更となっています)。
受給者もしくはその配偶者または扶養義務者の前年の所得が一定額以上であるときは支給されません。
資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護をおこない、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。
生活保護を受けるには、以下4つの条件を満たしている必要があります。
1 援助してくれる身内、親類がいない
自身で生計を立てるしかなく、かつ親や兄弟3親等以内の誰からも援助を受けられない場合
2 まったく資産を持っていない
貯金や土地などを所有している場合で、その貯金や土地を売却してからでないと受けられません
3 病気やケガなどの理由により働けない
1、2の条件を満たしており、病気やケガなどで働けない場合は生活保護を受ける権利があります
4 上記1~3を満たしている状態で、月の収入が最低生活費を下回っている
上記した3点の条件を満たしており、かつ年金などの収入があっても厚生労働省が定めている最低生活費の基準額を満たしていなければ、その差額分の生活保護を受けることができます(最低生活費は居住地域によって変わります)
厚生労働省が定めている最低生活費から現在の収入額を引いた、差額分が支給されます。
また、生活保護の中には生活を営む上で必要な8つの経費それぞれに対して必要な費用が扶助されます。
・生活扶助
・住宅扶助
・教育扶助
・医療扶助
・介護扶助
・出産扶助
・生業扶助
・葬祭扶助
被保険者が死亡した際に、残された遺族に対して支給される公的年金です。遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。
死亡した被保険者が加入していた年金や、子供の有無などによって内容は変わります。
遺族基礎年金の場合
遺族基礎年金は、18歳に到達して最初の3月31日(ただし一定の障害の場合は20歳)までの子供を持つ配偶者に対して、子供の人数に応じて支給されます。
遺族厚生年金の場合
会社員または老齢年金の受給資格を満たして死亡した被保険者の年収850万未満の配偶者に対して、遺族基礎年金の上乗せとして支給されます。
母子家庭および父子家庭で18歳未満の児童を養育している場合、受けられる手当です。市区町村独自の制度であるため、制度をおこなっていない地域もあります。詳しくはお住まいの役所でおたずねください。
支給条件は市区町村によって異なりますが、主に以下のようなものです。
・母子家庭および父子家庭で18歳(もしくは20歳)未満の児童を養育していること
・民間の賃貸住宅に居住し、申請先の住所地に住民票があること
・扶養義務者の前年度の所得が、児童扶養手当の所得制限限度額に満たないこと
・生活保護を受けていないこと
支給額は市区町村によって異なりますが、平均で5000円〜1万円が相場のようです。
・東京都武蔵野市:月額1万円(家賃が1万円以下の場合は支払家賃相当額)
・東京都国立市:家賃の3分の1の額(上限月額1万円まで)
・神奈川県鎌倉市:上限月額 8000円(家賃月額が8万円以内)
・神奈川県海老名市:一律月額7000円
所得制限は市区町村によって異なります。
母子家庭および父子家庭の児童、または障害のある児童が18歳に到達して最初の3月31日まで支給される手当です。市区町村独自の制度であり、主に東京都で実施されています。
18歳に到達して最初の3月31日までの児童がいる、次のいずれかの状況にある母子家庭および父子家庭。
・父母が離婚した
・父または母が死亡または生死不明
・父または母に1年以上遺棄されている
・父または母が法令により1年以上拘禁されている
・婚姻によらないで出生した
・父または母に重度の障害がある
・父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
児童1人につき月額1万3500円
次に減免・割引制度についてみていきましょう。意外と忘れがちな寡婦控除や、新しく実施される幼児教育無償化についてまとめました。
その年の12月31日時点で夫と離婚または死別(生死不明含む)し、再婚をしていない場合、助成が受けられます。未婚の場合は適用対象外となります。控除の種類は次の2つ。
・寡婦控除(27万円の控除)
・特定(特別)の寡婦控除(35万円の控除)
自分がどちらに該当するのかは、下記表で確認してください。
毎年の年末調整(確定申告)の際に、自ら申告する必要があります(毎年、申告をし忘れている方が結構いらっしゃいます)。
1 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を準備します
2 「主たる給与から控除を受ける」の欄の「C.障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」という項目を確認します。このなかの、「寡婦」または「特定の寡婦」のいずれか該当する方にチェックをします(上記表を確認)
3 チェックを入れた項目の右側の「左記の内容」という項目を確認します。この空欄部分には、以下の内容を記入します
・夫との離別または死別について
・子供の氏名と続柄
・子供の所得見積額
・今年の所得見積額(所得500万円以下の場合)
もし、申請を忘れていた場合は、過去にさかのぼって請求できます。詳しくはお近くの税務署へご相談ください。
所得が基準以下の世帯や何らかの理由により収入が大きく減少し、保険料の支払いが困難なとき保険料を減免できる制度です。
市区町村や、運営会社により実施の有無・内容は異なります。例えば、JRでは児童扶養手当を受給している世帯の世帯員の通勤定期乗車券の運賃の3割引を行っています。
粗大ごみの手数料免除は、市区町村による制度です。主に、児童扶養手当を受けている世帯などを対象に、免除制度があります。詳しい内容はお住まいの市区町村役所へお問い合わせください。
粗大ごみの手数料免除は、市区町村による制度です。主に、児童扶養手当を受けている世帯などを対象に、免除制度があります。詳しい内容はお住まいの市区町村役所へお問い合わせください。
2019年10月から幼児教育無償化が全面的に実施される予定です(母子家庭だけでなく、すべての子育て世帯が対象)。認可保育所や幼稚園に通う3~5歳児、および住民税非課税世帯の0~2歳児の保育料は原則無料になります。また、認可外施設も保育が必要と判断された場合、上限つきで補助が受けられます。
0~2歳児
・住民税非課税世帯のみが対象
・認可保育所や幼稚園、認定こども園などの認可施設は無料
・認可外施設は月4万2000円までを補助
3~5歳児
・全世帯が対象
・認可保育所や幼稚園、認定こども園などの認可施設は無料
・認可外施設は月3万7000円までを補助
・新制度の対象とならない幼稚園については、月2万5700円までを補助
・開始年齢は、原則、小学校就学前の3年間。ただし、幼稚園については、学校教育法の規定等に鑑み、満3歳から無償化
保育の必要性の認定を受けた場合、幼稚園に加え、利用実態に応じて、月1万1300円までを補助。
認可外保育施設のほか、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業なども対象です。
最後に、上記以外でご紹介しておきたい制度についてお話しします。一つ一つは小さなことでも、その積み重ねが何かのときに役立つかもしれません。
児童扶養手当を受給している世帯等が利用できるお得な貯蓄制度です。通常の利息と比べて高利息なので、わずかながらでも預けておくと大きくなって返ってきます。また、元本350万円までの利子が非課税になります。銀行で取り扱っている商品でもマル優を利用できないものがあるので、詳しくは各金融機関にお問い合わせください。
すべての子育て世帯が受けられるサービスです。全国共通の「コソダテ」マークを協賛店舗などで提示することで割引などが受けられます。お住まいの地域だけでなく、旅行先や帰省先でも利用ができるよう、47都道府県で相互利用が可能となりました。
全部で18の制度、手当についてご紹介しました。これらは必ずしも市役所の窓口で教えてもらえるものではありません。「こんな制度あったんだ!」と後悔しないように、それぞれの受給要件や内容をしっかりチェックし、活用しましょう! 1 児童手当 2 児童扶養手当 3 ひとり親家庭の医療費助成制度 4 こども医療費助成 5 特別児童扶養手当 6 障害児福祉手当 7 生活保護 8 遺族年金 9 住宅手当 10 児童育成手当 11 所得税、住民税の減免 12 国民年金、国民健康保険の免除 13 電車やバスの割引制度 14 粗大ごみの手数料免除 15 上下水道料金の割引 16 保育料の免除、減額 17 非課税貯蓄制度(マル優) 18 子育て支援パスポート事業